教育ICTリサーチ ブログ

学校/教育をFuture Readyにするお手伝いをするために、授業(授業者+学習者)を価値の中心に置いた情報発信をしていきます。

社会科の授業にデジタル写本などを使う

 先日、先生方と話をしていて、「社会の先生はオタクが多い」という話になりました。ICTを使って教室で「こんなものを見せてあげたい」「あんなものを見せてあげたい」と探し始めたら、時間を忘れてしまう、いくらでも時間をかけられる、と言ってました。

 ICTは今まではどうしても見せにくかったものを簡単に見せることができるようにしてくれます。我々は、それを「教材拡充」と言っています。
 教科書や資料集には載っていないものを見せたいとき、資料を先生が探して見せるわけですが、それだって1冊しかなければ教室でみんなに見えるようにしたり、実物投影機で見せたり、ということになります。ICTでデジタル化されていれば、動画として見せることができたり、拡大して見せることができたり、一人1台の環境があれば、全員と一緒に見ることも、個別に好きなようにスクロールさせて、何か発見したものを発表してもらうように導くこともできます。
 こうして、これまで教室になかった教材を教室に持ち込むことができること、また、これまでになかった教材の見せ方ができること、を「教材拡充」と呼んでいます。(以下のページをご参照ください。)

ICT利活用の目的 9類型(2014年8月版) - 教育ICTリサーチ ブログ

バチカン図書館による古文書のデジタル化

 先月、バチカン図書館が4000冊に及ぶ古代写本・古文書などをデジタル化して、無料公開しているというニュースが出ました。下は、ボルジア写本と呼ばれる、15世紀末にメキシコのプエブラ付近で制作されたとされる写本。イタリア語の注釈が書き込まれているらしく、それによりこの写本が16世紀にはヨーロッパに存在したことがわかる、というのが、解説文として書かれています。
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 「閲覧する」のボタンをクリックすると、各ページを拡大表示をすることもでき、ページごとに見ていくことができます。
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国立国会図書館デジタルコレクション

 日本国内でも、国立国会図書館のデジタルコレクションなどで、古地図を見ることもできます。
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 文字検索も可能になっているので、見せたい書誌を選ぶことも可能です。例えば、「坂本龍馬」で検索してみると、『維新の史蹟』という本(1939年出版)を見ることができます。
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 ちょっとした授業の導入などに、こうしたデジタルコレクションを使う、というのが可能なのかな、と感じます。

先生方が授業でどう使うかをデザインする

 問題は、こうしたデジタルコレクションは、授業の中の最初のつかみであったり、伝えた知識を裏付けるための素材であったり、といった使い方をされるべきだということです。
 社会を教えるとき、日本史を教えるとき、世界史を教えるときに、どんな素材があれば児童・生徒に伝わりやすいだろうか、ということをいちばんよくわかるのは、現場に立っている先生方です。先生方が授業を設計するときに、「どんな素材があればいいな」とわかったうえで、「どこで探せば見つけやすいか」がわかるということが最初のゴールかなと考えています。

 教科書や資料集よりも、もっと幅広く、さまざまな素材を使って教えたいという先生は多いと思います。定番の史料は教科書や資料集に載っているので、それ以外のものは、どれを使いたいというのはわかれると思います。使いたい教材はロングテール、どう探すかの部分が使いやすくなれば、使われる場面が増えてくるのではないかな、と思います。

 先生方の「この資料、使ってよかった!」というノウハウのシェアが進んでいけば、より多様な授業が出てくると思います。

(研究員・為田)